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2024年12月25日
12月25日の記事
ブログを更新する時間がなかなかとれずにおりました。
今年も、あっという間に過ぎていきました。
写真は工事前のものです。
クロキやソテツの撤去、サンダンカ等を植えたいという依頼でした。
クロトンが何年経ってもあまり成長しないというご相談だったり、
根腐れしている植物があったりという状況でした。
サンダンカはこちらのブロック塀に沿って植えることに。
砂利を取り除いてからの植栽となりますが、一筋縄ではいきませんでした。
話しは変わりますが、ここからが本題です。
建物を建てる時に、基礎工事や設備工事の後、土の埋戻しという工事があります。
今回は、その埋め戻す土が、環境にどのような影響を与えるのかということについてお伝えしていきます。
長くなりますので、結論から申し上げますと、
残土で埋め戻すと、環境を回復させるにはその土を掘り出して処理しないといけないので多くの手間とコストがかかりますよ。
だから埋戻しは自然環境を回復させるようなやり方で最初からやった方が手間もコストも自然環境的にも結果的にはいいですよ。ということです。
興味とお時間のある方はどうぞこのまま読み進めてくださいませ。
クロキを撤去するために敷石を外すと雨後でもないのに滞水していました。
池のような状態でした。
この時点では水道管からの漏水の可能性もゼロではないと思い慎重に周囲を掘り進めるも水道管は見当たらず。
かと言って、いっこうに水は捌けることがありませんでした。
兎にも角にも水を捌かさねばなりませんので、水を逃がせる所まで水みちを作らなければなりません。
いったん掘り出すと、地中に滞っていた水がどんどん集まりだしました。
根回しできるくらいまで水が捌けた時の写真です。
クロキを吊り上げると、根の中~下部は腐れておりました。
黒くなっているのが根腐れしている部分です。
このサイズのクロキだと根鉢の大きさは(高さ)50cmくらいですが、
上部20~25cmだけでしか生息できない地中の状況だったのです。
地中からはもちろん悪臭がします。
こうなると、深く根を張ることはできません。
深く根を張ることができるということは、環境を安定させることへとつながります。
酸素が不足し、有機ガス(メタンガスなど)が出たりすると、酸素を必要とするいきもの達は棲みにくくなり数が減っていきます。
そうすると、植物も弱っていきます。
なので地中の適度な通気通水というのはとても大事なのです。
適度な通気通水は植物と協力関係を結べる菌やミミズなどの小さないきもの達も棲みやすい環境となります。
それは、生物多様性へとつながります。
多種多様、いろんないきもの達が元気でつながり合い命をまっとうしているってなんかいいよね。
しかし、地中の通気通水を滞らせるような埋戻しをしたり、コンクリートで塞いだりしてしまうと、酸素を必要とするいきもの達は息苦しくなり呼吸ができなくなって減少したり死滅してしまったりします。
たまった水はまったく引いていくことはありません。
こちらの敷地で埋め戻しに使われていた土はいったいどのようなものかと言いますと、
沖縄南部特有の粘土質のクチャとクラッシャランと呼ばれる琉球石灰岩を砕いた砂利と石粉の混ざったものとコンクリート再生材、主にこの3種類をごちゃ混ぜにした土で、それをしっかりと転圧しているものですから、水が捌けず滞水状態となっているわけです。
擁壁のこの排水口が水の逃げ道となりますが、上記のような土なのでまったくゼロというわけではないでしょうけれども、排水口からはほとんど水が出ることはありません。
ひと昔前だと、こうした排水口がある場合、グリ石で水が抜けるようにするのは当たり前のことでしたが、近年ではグリ石を入れない現場とよく出会うようになりました。
途中、雨が降り水量が増えていますが、これまではこの水が通り道をふさがれ長らく地中に滞っていたのです。
こちらのお宅では2mほどの擁壁で囲まれた敷地の全部が上記のような埋戻し土となっていました。
結果、どこを掘っても土から悪臭がする状態で、植物は浅根となっています。
敷地のすべてを通気通水改良させるのがベストですが、それをするとたいへんな工事金額がかかってしまいます。
お施主様と相談し、今回は、新たな植栽に関わるところと最低限の水みちを作ることを改善していくことになりました。
土が黒っぽくなっているのは、土が酸欠状態となっているためです。(グライ化)
ここから悪臭が放たれますが、2~3日、空気にさらすと悪臭は消えました。
ここは地中の水みちをもう一カ所増やすためにクロトン側の花園の捨てコンを取り除き排水口へ。
こんな感じで排水口までつながっています。
最小限の地中の水みちを掘り終え炭を敷いているところです。
暗渠管は使用せず、掘ったところからはたくさんのコンクリート殻や石、瓦辺などが出てきましたのでそれらを利用することにしました。
植栽する場所は敷地の水みち確保を兼ねてグリ石を入れてます。
地中の通気通水が滞るような埋戻しをしてしまい、それを回復させようとした場合、
埋設物を破損させないよう、気を付けて掘っていかないとなりませんし、
また、掘った土がちょっとした手間で再利用できればいいのですが、
今回のような土だと捨てた方が時間的にもコスト的に良いとなったりして、たいへんな手間とコストが必要となります。
また、何でこのような土で埋め戻しがされてしまうのかというと、最大の理由はもちろんコストにあるわけです。
各建設業者さんはお施主様の負担を軽減しながら利益を上げていかないといけませんので、いかにしてコストダウンを図るかという切実な事情を抱えています。
ですから、残土と呼ばれるこのような土で埋め戻しをすることでコストダウンを図ることになってしまいます。
また、それが環境へ悪影響を与えることを業者さんもお施主さんも知らない場合、安くできるんだからそれでいいとなってしまうのが今現在あちこちで行われていることです。
そうしたことが、高度成長期以降、急速に拡大し、山や川や海が傷つけられ、いきもの達は減少し、自然は衰弱し・・・、気候変動や洪水、土砂崩れなどの災害はは自然的なものなのか人の行為によるものなのか・・・、いろんなことが目の前の現実としてあらわれてきています。
多くの方々が、それぞれの立場で自然環境を良くしていこうと様々な活動がなされています。
私の目の前にあるもののひとつとして、自然の回復を促すためにも地中の通気通水を考慮せずに残土で埋め戻しをするのはやめましょうということを多くの人に知ってもらい、地中の適度な通気通水が確保されるような埋戻しをしていこうということがあるわけです。
工事期間の2/3は見えない地中のことに手をかけ、残り1/3は石の据え直しや植栽などの目に見える仕事です。
植栽はサルスベリ等もともと鉢植えをたくさんお持ちでいらしたのでそれらを地植えし、新たな植栽はクチナシやタマリュウ、ヤブラン、ツワブキくらいでしょうか。
首里にあるこちらのお宅はもともと造り酒屋をされていたということでした。
3っつの井戸があり、フール(トイレ兼豚小屋)もあったことから、当時使用していたなごりの石がたくさんあるのです。
酒屋をされていた当時は水もきれいだったことでしょう。
今では、環境を衰弱させないと建物が建てられないような規則になっていますので、地中の通気通水を遮断し、土は腐敗し、水は汚され・・・ということが人間が構造物を造るいたるところで行われているのです。
お施主様とそうした会話を通し、「我が家の事例を発信することで現状を多くの方に知ってもらいたい!」というお言葉をいただきました。
私たちが暮らすことで、自然の一員として自然の豊かさや多様な生態系を保ち続けられるような社会にしていきたいものです。
そのための一歩として、埋め戻しをどうするかということを、改めて考えていくきっかけとなれば幸いです。
フールに使われていた石です。
土留めと腰掛をかねた長石。
飛石は石臼で。
ニービ石もありました。
土留めやら維持管理のための飛石を打ったら意図せず笑顔のようになりました。
かなり長いブログになってしまいましたので、サンダンカの植栽についてはまたの機会にアップします。
長々とお読みいただきどうもありがとうございました。
Posted by 艸木 at 11:42│Comments(0)