2012年05月05日
S邸、ベランダの庭
S邸:ベランダの庭では、ベランダゆえの困難で制限ある状況の中、クライアントの要望に応えつつ、目標とするところの表現をいたしました。
まずは「色」について。
色にどのような意味と役割を持たせるのかということを考え、各素材の色を決めております。
色が持つ意味の解釈には、様々な観点がありますが、その色にどのような願いを込め、役割を担ってもらうのかが大切なのです。
茶色のタイルは「地」=「地球」への賛辞と敬意のあらわれです。
「地」から離れてしまっているのが「ベランダ」ですが、離れれば離れるほど「地」の大切さを忘れずにいなければならないのです。
腰かけ部分を凹ませ、掘り炬燵のようにしているのも、少しでも「地」の大切さを忘れずに、共にあろうという心のあらわれです。
そして、凹ませることにより、空と海、水平線の見え方も違ってくるのです。
ベランダに立ち、景色を眺める。
凹ませた腰かけより眺める。
その視点の高低差によりもたらせれる効果…。
立ちながら眺める景色は、客観的なものとなります。
低い視点での眺めは、自らと、海、空、水平線と一体化し融合するような気分が味わえると思うのです。
話が、それてしまいました。
色の話に戻ります。
テーブルや、腰かけの背もたれ、柱への貼り物の「黒色」は「風」を象徴したものです。
「風」は眼で見ることができないものですから、何も見ることができないこと暗闇と同じ「黒色」としております。
ベランダは、とても風が強いため、台風などの風による被害がないように、また、風で吹き飛ばされてしまいそうな物をベランダに置き忘れてしまわぬよう、「風」を象徴する色をあらわす必要があったのです。
植栽は、強風で枝が折れ、窓ガラスを割ってしまうといけないので、枝のない観葉植物にしました。
S邸のベランダをつくるにあたり、クライアントからの要望は
「朝食を食べたり、バーベキューができるように。」
「イス、テーブル、ベッドを設置したい。」
ざっくりとこんな感じでした。
私は、それを「人が快適に過ごすことができる空間」と解釈し「屋外のリビング」をつくることにいたしました。
家族や友人と過ごす空間は「あたたか」なものとなるのです。
タイルの「地」
黒色の「風」
植栽の「木」
風景の「海」と「空」
あたたかさの象徴である「火」
自然の構成要素を集めた空間です。
soumoku
Posted by 艸木 at 09:34│Comments(0)
│作品集